夫から愛人と結婚するために離婚したいと言われました。私は納得できないのですが、離婚に応じなければなりませんか。
2025年11月19日
離婚をめぐる法律とトラブル解決相談129
梅原 ゆかり
原則として有責配偶者からの離婚請求は認められません。
夫婦のうち、婚姻の破たんについて責任がある人のことを「有責配偶者」といいます。たとえば、夫の浮気が離婚の主原因だった場合、夫が有責配偶者となります。今回のようなケースは、有責配偶者からの離婚請求と呼ばれています。
離婚の協議や調停の申立てがあった場合、双方が合意すれば離婚は成立します。有責配偶者からの離婚請求であったとしても、相手がそれを承諾すれば離婚は成立するわけです。一方、合意ができなかった場合には、家庭裁判所に訴えを起こすことになります。
日本では、かつては有責配偶者からの離婚請求は認めないという原則がとられてきました。しかし、最近は、回復の見込めない破たんした婚姻生活の場合には離婚を認めるというのが裁判所の立場です。これは、実質は完全に破たんしている夫婦が戸籍上だけ婚姻関係を保っていても、本人にも周囲の人間にも何の利益にもならないという判断によるものです。ただ、破たんに責任のない配偶者が反対しているにも関わらず、すぐに有責配偶者からの離婚請求を認めるということはなく、一定の条件を満たすことが必要とされています。
判例上、一定の条件として認められた例としては次のようなものが挙げられます。
① 夫の不貞行為と婚姻生活の破たんとの因果関係が認められない場合
②双方に婚姻の破たんについて同程度の責任がある場合
③ 別居期間が相当に長期間に及び、かつ未成熟の子どもがない場合
たとえば今回のように夫が愛人を作り、愛人と結婚したいがために離婚したいといったようなケースでは、夫からの離婚請求は原則として認められません。しかし、①夫に愛人ができたのが、 夫婦関係が完全に破たんしていると判断される時期だった、②妻が夫に対して暴力をふるう、浪費癖があり家族を経済的に困窮させたなど、婚姻生活を破たんさせる原因が妻の側にも十分にあった、③別居が相当長期(6~8年)に及び、未成熟の子どもがなかった、などの状況が確認されれば、有責配偶者である夫の離婚請求が認められる可能性もあるということです。
一方、夫婦の双方に離婚の原因がある場合もあります。たとえば、夫が愛人との同棲生活を始めて3年、愛人に子どもができたので離婚して欲しいと言ってきたが、夫婦の別居の原因が数年前の妻の浮気にあるというような場合です。
この場合、夫は有責配偶者ですが、妻も浮気をしていた、という事情がありますから、夫からの離婚請求が認められる可能性は高いでしょう。ただ、浮気が1回限りのことで、その後は夫婦関係を修復するための努力をしていると認められた場合には離婚が認められないこともあります。
いずれにせよ、夫からの離婚請求に納得できないのであれば、 すぐに離婚に応じる必要はありません。まずは話し合いを行い、 合意できなければ裁判所の力を借りることを検討するのがよいでしょう。
夫婦のうち、婚姻の破たんについて責任がある人のことを「有責配偶者」といいます。たとえば、夫の浮気が離婚の主原因だった場合、夫が有責配偶者となります。今回のようなケースは、有責配偶者からの離婚請求と呼ばれています。
離婚の協議や調停の申立てがあった場合、双方が合意すれば離婚は成立します。有責配偶者からの離婚請求であったとしても、相手がそれを承諾すれば離婚は成立するわけです。一方、合意ができなかった場合には、家庭裁判所に訴えを起こすことになります。
日本では、かつては有責配偶者からの離婚請求は認めないという原則がとられてきました。しかし、最近は、回復の見込めない破たんした婚姻生活の場合には離婚を認めるというのが裁判所の立場です。これは、実質は完全に破たんしている夫婦が戸籍上だけ婚姻関係を保っていても、本人にも周囲の人間にも何の利益にもならないという判断によるものです。ただ、破たんに責任のない配偶者が反対しているにも関わらず、すぐに有責配偶者からの離婚請求を認めるということはなく、一定の条件を満たすことが必要とされています。
判例上、一定の条件として認められた例としては次のようなものが挙げられます。
① 夫の不貞行為と婚姻生活の破たんとの因果関係が認められない場合
②双方に婚姻の破たんについて同程度の責任がある場合
③ 別居期間が相当に長期間に及び、かつ未成熟の子どもがない場合
たとえば今回のように夫が愛人を作り、愛人と結婚したいがために離婚したいといったようなケースでは、夫からの離婚請求は原則として認められません。しかし、①夫に愛人ができたのが、 夫婦関係が完全に破たんしていると判断される時期だった、②妻が夫に対して暴力をふるう、浪費癖があり家族を経済的に困窮させたなど、婚姻生活を破たんさせる原因が妻の側にも十分にあった、③別居が相当長期(6~8年)に及び、未成熟の子どもがなかった、などの状況が確認されれば、有責配偶者である夫の離婚請求が認められる可能性もあるということです。
一方、夫婦の双方に離婚の原因がある場合もあります。たとえば、夫が愛人との同棲生活を始めて3年、愛人に子どもができたので離婚して欲しいと言ってきたが、夫婦の別居の原因が数年前の妻の浮気にあるというような場合です。
この場合、夫は有責配偶者ですが、妻も浮気をしていた、という事情がありますから、夫からの離婚請求が認められる可能性は高いでしょう。ただ、浮気が1回限りのことで、その後は夫婦関係を修復するための努力をしていると認められた場合には離婚が認められないこともあります。
いずれにせよ、夫からの離婚請求に納得できないのであれば、 すぐに離婚に応じる必要はありません。まずは話し合いを行い、 合意できなければ裁判所の力を借りることを検討するのがよいでしょう。